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メットガラ2025のドレスコードは「Tailored For You」──歴史を駆けたブラック・ダンディズムという美学に光を当てて

ニューヨークのメトロポリタン美術館コスチューム・インスティチュートで開催されるメットガラのドレスコードが、「Tailored For You(テーラード・フォー・ユー/あなただけの仕立て)」に決定。黒人男性の手によって磨かれてきたブラック・ダンディズムという美学を、ゲストたちはどう表現するのか──。
メットガラ、2025年、ブラック・ダンディズム、ドレスコード、テーマ
1899–1900年の仕立て屋たち。フランシス・ベンジャミン・ジョンストン撮影。Photo: The Museum of Modern Art, New York, Gift of Lincoln Kirstein (859.1965.86) John Wronn

2025年5月5日(現地時間)にニューヨークのメトロポリタン美術館コスチューム・インスティチュートで開催されるメットガラのドレスコードが、「Tailored For You(テーラード・フォー・ユー/あなただけの仕立て)」に決定した。

メトロポリタン美術館によれば、このドレスコードは展覧会「Superfine: Tailoring Black Style(華麗なるブラックスタイル)」の焦点がメンズウェアであることにちなんだもので、「ガイダンスを提供し、創造的な解釈を促すために意図的に構想された」という。

黒人のアイデンティティ形成におけるテーラードスタイルの重要性を探求する展覧会では、衣服やアクセサリーだけでなく、絵画、写真、映画などあらゆるメディアを通してブラック・ダンディズムの変遷を辿る。メンズウェアに特化した展覧会は2003年の「Bravehearts: Men in Skirts」展以来。ゲスト・キュレーターのモニカ・L・ミラーが2009年に出版した著書『Slaves to Fashion: Black Dandyism and the Styling of Black Diasporic Identity(原題)』がインスピレーションとなった。

「ダンディズムは取るに足らないと映るかもしれませんが、社会的・文化的ヒエラルキーへの挑戦や超越を意味するものでもあります」とミラー。「それは人種や階級、ジェンダー、セクシュアリティ、そして権力が、アイデンティティやリプレゼンテーション、社会移動とどう関連しているのかを問うものです」と話す彼女は、本展を「表明と挑発としてのダンディズムの探求」だと表現する。

また、本展は展示内容の真の多様化を目指すメトロポリタン美術館の継続的なコミットメントを反映したものでもある。キュレーター・インチャージのアンドリュー・ボルトンは、次のように話す。「モニカの著書にある内容を展覧会に反映させることを可能にしたのは、私たちが所蔵するハイスタイルなメンズウェアのコレクションです。これこそが、ブラック・ダンディズムの歴史を遡り、(展示として)形にするための土台となるのです」

2025年のドレスコードを紐解く鍵となるのは“テーラリング”

1986年、ニューヨーク5番街を歩くアンドレ・リオン・タリー。アーサー・エルゴート撮影。Photo: The Metropolitan Museum of Art, New York, The Irene Lewisohn Costume Reference Library

モーティ・シルズがデザインしたスーツ。Photo: © Tyler Mitchell 2025

今回のドレスコードはさまざまな解釈ができるが、大きく捉えれば、自分自身のスタイルを反映させたルックを纏うことを意味すると言える。1940年代にジャズ・ミュージシャンが流行させたズートスーツから、「世界一お洒落な男たち」とも称されるコンゴのサプールが着るような大胆でカラフルなスタイルまで、テーラリングをフィーチャーしたルックが登場するのは間違いないだろう。

またあるいは、メットガラの共同ホストを務めるコールマン・ドミンゴルイス・ハミルトンエイサップ・ロッキーファレル・ウィリアムス、そして名誉ホストのレブロン・ジェームズらのスタイルにヒントを得るゲストもいるかもしれない。そのほかにも帽子やネクタイ、杖やブローチ、ポケットチーフなど、メンズウェアならではの小物使いにも注目だ。

デニムティアーズ「T.G.B.J.」。Photo: © Tyler Mitchell 2025

ゲストリストのほとんどは伏せられたままだが、アートや映画、文学、音楽スポーツなどの分野で活躍する著名人で構成されるメットガラ・ホスト・コミッティーも発表されている。アンドレ・3000、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ、グレース・ウェールズ・ボナー、シモーネ・バイルズ、ジョナサン・オーウェンズ、ジョーダン・キャスティール、ダッパー・ダン、ドーチー、アヨ・エデビリ、エドワード・エニンフル、ジェレミー・O・ハリス、ブランデン・ジェイコブス・ジェンキンス、ラシード・ジョンソン、レジーナ・キングスパイク・リー、トーニャ・ルイス・リー、オードラ・マクドナルド、ジャネール・モネイ、ジェレミー・ポープ、エンジェル・リース、シャカリ・リチャードソン、オリヴィエ・ルスタンタイラアッシャー、カラ・ウォーカーと、実に多彩な顔ぶれだ。一同は、サイ・ゲイン、デレク・マクレーン、ラウル・アヴィラがデザインを手がけるスペースで、クワメ・オンワチをシェフに招いたディナーに参加する。

2025年のメットガラに誰が出席するのか、ゲストたちはどういった装いを見せてくれるのか、今から期待せずにはいられない。

あらゆる年齢層を対象にしたプログラムも展開

フー・ディサイズ・ウォー 2024-25年秋冬コレクションより。Photo: © Tyler Mitchell 2025

2025年5月10日から10月26日まで開催される「Superfine:Tailoring Black Style(華麗なるブラックスタイル)」展は「自由」や「ヘリテージ」、「美」といったダンディズムを形成する12のセクションで構成され、参画アーティストには、トークワセ・ダイソン、タンダ・フランシス、タイラー・ミッチェルに加え、特別コンサルタントを務めるイケ・ウデらが名を連ねる。

展示品のなかには、アメリカ黒人解放運動の指導者だったデュボイスの写真をはじめ、作家ゾラ・ニール・ハーストンやニッキ・ジョヴァンニの作品、アフリカ系アメリカ人向け週刊誌『Jet』のアーカイブといった文化的・歴史的価値の高い参考文献も揃う。さらには、奴隷制度廃止運動家だったフレデリック・ダグラスや文化運動「ハーレム・ルネサンス」時代のパフォーマーたちが着用した衣服のほか、アンドレ・レオン・タリーのワードローブ、ヴァージル・アブローやフォデイ・ダンブヤらによるデザインも目にすることができる。

5月のオープンに先立ち、あらゆる年齢層を対象としたトークイベントやプログラムがニューヨーク市内のさまざまな施設で開催される予定だ。